防災士資格取得に補助金

2018年に発生した大阪北部地震などを教訓として大阪府摂津市が防災士の養成に力を入れています。
市民が防災士の資格を取得するために必要となる講座の受講料や教本の購入費、受験料など合計約6万円の費用のうち、最大で3万円を市が補助する制度を昨年から始めています。76歳の森山一正(もりやま かずまさ)市長も試験に挑戦し、合格されたそうです。
防災士とは、NPO法人・日本防災士機構(東京)が認証する民間資格で所定の研修講座を受講して試験に合格し、救急救命講習を受ければ取得できます。平常時は防災の啓発活動や避難訓練、災害時は避難誘導や住民による救出救助活動などでの活躍が期待されています。2020年5月末現在の登録者は全国で19万6千人に上ります。
摂津市は大阪北部地震で住宅被害が2300棟以上に上りましたが、避難所運営などに精通する職員が少なく、対応に追われたという苦い経験があります。そのため、市は災害時にリーダー的な役割を果たす防災士の必要性に着目し、資格取得を目指す人への補助を行うことにしました。森山市長は「私が先陣を切る」と資格取得を「宣言」し、2019年の夏から約1ヶ月間、休み時間や自宅で360ページを超える教本を読み込み、9月に研修講座を受け、筆記試験に挑戦しました。翌月には合格通知が届いたそうで、「実際に役立つものを学べた」と振り返っておられます。
摂津市内の防災士は2020年4月末時点で76人。昨年度は5人が補助金を受けて資格を取得しました。今年度は32人への補助を想定し、96万円を予算に計上しています。森山市長は「今後の災害では、避難所で新型コロナウイルスの感染防止対策も求められ、リーダー役の重要性がますます大きくなる。多くの人に防災士の資格取得に手を挙げてほしい」と呼びかけています。

引用:https://www.asahi.com/articles/CMTW2006162800001.html

─ YODOQの見方───────────────────────────

日本防災士機構とは、阪神・淡路大震災の教訓の伝承と市民による新しい防災への取り組みを推進し、防災と危機管理に寄与することを目的に平成15年に創設された団体で、同年から防災士養成研修と資格取得試験が始まりました。防災士とは、防災に対する一定の意識・知識・技能を持っていることを本防災士機構(民間団体)が認証する資格です。

防災士の基本理念
1、自助
自分の命は自分で守る。
自分の安全は自分で守るのが防災の基本です。災害時に命を失ったり、大けがをしてしまったら家族や隣人を助けたり、防災士としての活動をすることもできません。まず、自分の身を守るために日頃から身の回りの備えを行い、防災・減災に関する知識と技能を習得し、絶えずスキルアップに努めます。

2、共助
地域・職場で助け合い、被害拡大を防ぐ。
災害の規模が大きければ大きいほど、消防、警察などの公的な救援活動が十分に機能するまでには一定の時間がかかります。そこで発災直後における初期消火、避難誘導、避難所開設などを住民自身の手で行うために、地域や職場の人たちと協力して、災害への備えや防災訓練を進めます。防災士は、そのための声かけ役となり、リーダーシップを発揮します。

3、協働
市民、企業、自治体、防災機関等が協力して活動する。
日頃から、行政をはじめ防災・減災に関わる多様な機関、団体、NPOなどと密接に連携し、防災訓練等の活動を通じて、お互いに顔の見える関係をつくり上げ、「災害に強いまちづくり」をすすめます。また、大規模災害が発生した際には、それぞれが可能な範囲で被災地救援・支援活動に取り組みます。

防災士の資格は民間資格であり、資格取得によって特定の権利が得られるというものではなく、自発的な防災ボランティアを行うために必要な知識を学び、その知識を自分自身のためだけでなく地域にも役立てていくためのものです。近年の東日本大震災や熊本地震でも防災士のリーダシップにより住民の命が助かったり、避難所開設がスムーズに運んだという事例も多数あったそうで、防災士に対する社会的評価が上がり、世間からも注目される資格となりました。その有意性が認められ、資格取得に助成金を設ける自治体も増え、現在までに助成金を実施した自治体は354自治体あります。大阪府では、摂津市以外に泉佐野市、大阪狭山市、河南町が助成金を出しています。

新型コロナウイルス感染リスクのある現在、災害が発生した時に備え、政府は6月8日付けで「新型コロナウイルス感染症対策に配慮した避難所開設・運営訓練ガイドラインについて」を公表しました。これからの季節、台風による水害の可能性もありますが、災害における「避難」の在り方も変わってきています。自宅が浸水や土砂災害の危険が無い場所にあれば、その場に留まる在宅避難も選択肢となっています。その場合、水や食料、薬や生活必需品の備蓄があるかどうかが重要です。
日本は地震や台風などの自然災害の多い国です。そのため、災害発生時に被害を最小限に抑えるための予測システムや防災システム、または被災地支援のボランティアを効率的に受け付け活動してもらうための仕組みなどが考えられ、利用されています。
しかしながら、とっさの時に命を守るための行動ができるかどうかには日頃の備えや心構えがとても大切です。災害が発生してからしばらくは不安もあり、気構えもできていますが、次第に平穏に慣れてしまいがちです。この機会に今の自分にできることとして非常持出袋の準備や非常食の消費期限の確認や補充などをしてみてはいかがでしょうか。

参考:https://bousaisi.jp/