飛沫とともに遮られた音声

筑波大学のデジタルネイチャー研究室のチームは、音声を自動でテキスト変換し、相手との間に設置した透明ディスプレイに字幕をリアルタイム表示する聴覚障害者向けシステム『See-Through Captions』を開発した。
聴覚障害者との対面コミュニケーションにおいて、近年はスマートフォン等を活用して相手に話し言葉を字幕として提示できる自動音声認識のリアルタイムキャプションが利用されるようになってきたが、スマートフォンを見たり、見せたりしていると、相手のボディーランゲージや表情、アイコンタクトなどの非言語コミュニケーションを見落としがちだった。この問題を透明ディスプレイに字幕を表示することで解決した。
システムの主な機能は、自動音声認識と字幕表示の2つで、透明ディスプレイ前の話者の音声を取り込み、その音声を自動音声認識を介してテキストに変換、音声認識結果のテキストを透明ディスプレイにリアルタイムで表示する。
スーパーマーケットから役所まであらゆる場所で飛沫防止用透明パネルが設置されているコロナ禍において、今回のシステムとの相性も良く、導入も考えられるだろう。

引用:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2103/22/news014.html

─ YODOQの見方───────────────────────────

記事で紹介されたシステムは聴覚障害者向けとして開発されたものだったが、コロナ禍の今、多くの人に求められている機能を保持しているように思われる。
というのも、コロナ感染対策として受付などで飛沫防止用の透明パネル・シートが多く用いられているが、飛沫だけでなく相手に届けたい音声まで遮られてしまっているのだ。

ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社聴脳科学総合研究所が地方独立行政法人東京都立産業技術研修センターと共同で「飛沫感染防止用具による音声減衰の調査」を実施したところ、マスク着用・アクリルパネル越しの会話が聞こえづらいにもかかわらず「聞こえたふり」をした経験がある人は8割以上という結果になった。

マスクのみの場合でも、2000hz以上で5dBの減衰が観測されたが、さらにアクリルパネルを設置した場合は、最大で20dBの減衰、ささやき声程度の音量となる。この減衰によって子音に当たる周波数帯域の音量が2分の1程度になるため、言葉の聞き取りは困難である。スーパーやコンビニのレジなど周りが騒がしい場面では、軽度難聴者程度の聞こえの状態となる可能性が高い。もちろん難聴や聴覚障害の方には言葉の聞き取りは、より困難な状況となる。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000048892.html

聞こえにくい環境を生むアクリルパネルに対し、今回の記事で紹介したシステムは有効な解決策に思われる。他にもパネル越しにマイクとスピーカーを使って会話するような窓口会話システムをユニペックスが開発するなど、この分野に対するニーズが高まっている。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000063401.html

ただ、このようなシステムなどを導入するにはどうしても費用面が問題となってくる。
費用をかけずにできるアクリルパネル越しの相手へのコミュニケーションの方法としては、
1.文字にして伝える、2.ボディランゲージを交えながら伝える、3.相手の表情を確認しながら、話を進める などがある。

このような状況だからこそ、今一度相手への伝え方を意識した話し方を心がけてみるのも良いのではないだろうか。