米グーグル、企業「爆買い200件」の通信簿
検索エンジンからビジネスを開始し、事業領域を自動運転車やスマートフォン、人工知能(AI)など次々と拡大してきたGoogle。ビジネス拡大の手段として、M&A(合併・買収)を駆使しこの10年で200社近くの企業を買収してきた。
非常に多くの企業を買収してきたGoogleだが、M&A対象としてきた企業はIT技術の隆盛を現しているといえる。
2000年代後半にはデジタル広告事業に注力。
2007年インターネット広告の配信インフラ会社ダブルクリックを買収。買収の当初の目的はグーグルの既存の広告システムを補うためだったが、グーグルはこれにより収益性の高いディスプレー広告業界に足がかりを築くことができた。
ユーチューブの買収
ユーチューブの買収によりテレビなどの既存メディアからネットでの視聴へのシフトを先取りすることができた。さらに、ユーチューブはその後トラフィック量を増やし、広告事業を成長させた。
2010年代に入るとモバイルにシフト
電子・通信機器メーカー モトローラを買収、数千件の特許を獲得。さらに、モトローラのスマホ生産能力がグーグルのスマホ用OS「アンドロイド」のエコシステム(生態系)確保に役立つと期待していた。
IoT企業へ
ホームエレクトロニクス企業 ネストラボの買収で、GoogleはIoT分野への参入を果たした。スマート温度コントロール(サーモスタット)や煙探知機のメーカーを取得したことで、グーグルは家庭向け事業に加え、アンドロイドのエコシステムを拡充する機会を手に入れた。
─ YODOQの見方───────────────────────────
今回GoogleのM&Aの歴史を見てきたが、そもそも、M&Aによってもたらされる効果やM&Aが失敗になってしまうケースにはどのような原因があるか。そちらを見ていきたい。
企業がM&Aを行う際に期待するものは「シナジー効果」である。シナジー効果とは「相乗効果」という意味であり、具体的に言えば、「経営資源の有効活用や異なる事業を組み合わせることにより、単なる利益の合計だけでなく大きな付加価値を生み出す効果」のことである。
GoogleはM&Aによって多くのシナジー効果を産み出し、成長を遂げてきたというわけである。
しかし、数多くのM&Aの中には期待していた通りの結果を得られなかった案件もある。2012年に、Googleの企業開発担当VP David Lawee氏が「2003年以降120件の買収を行っているが、うまくいったのは、その2/3だ」と対談の中で述べている。
シナジー効果と関連の深い言葉で「アナジー効果」というものがある。アナジー効果という言葉はシナジー効果の反対語で、「事業間の相互マイナス効果」という意味である。大きなシナジー効果が見込めるM&Aを行ったにもかかわらず、最低ラインを超えることができずアナジー効果となってしまったケースがGoogleのM&Aの中に数多くあるという事である。
このようなアナジー効果の発生を防ぐためには、シナジー効果を目論むM&Aや連携の十分な検討が必要となってくる。同業種類のM&Aがシナジー効果を生むからと安易に考えることはよくないものであり、自社の状況、他社の状況、M&A後の予測をしっかりとふまえて、判断することが大切である。