みんな「白シャツ・黒パン」でも気にしない?
街を歩いていると、昨年くらいから気になる光景を目にするようになりました。
無地の白いTシャツに黒いパンツをはいている人が増えている気がする(主に男性)ということ。
厳密に調査をしたものではないですが、以前よりも目にする頻度が明らかに増えました。シンプルで、カブりやすい服装…。
もしかして、「みんなと違う服や持ち物を身につけて差をつけたい」とか「他人とカブると恥ずかしい・嫌だ」という感覚に、何か変化が生じているのではないか…?
個性化・差別化へと向かうといわれる消費のベクトルには、変化が生じつつあるのでしょうか?消費に関わるデータを分析していきます。
1.消費の原資が限られている?
まずは「先立つもの」がどうなっているのか確認してみたいと思います。
20年前と比べてみると、可処分所得は87%程度になってしまいました。所得は増えていないのに、税・社会保障に振り向けられる割合がどんどん増えているようです。
2.「こだわり型支出」が減少傾向にある?
「住居」、「光熱・水道」、「保健医療」、「交通・通信」、「教育」 インフラ型消費
「食料」、「家具・家事用品」、「被服及び履物」、「教養娯楽」 こだわり型消費
20年前から比べると、こだわり型消費が少なくなっています。「被服及び履物」は20年前と比べると約7割に減少。
3.「こだわり離れ」が加速している?
「値段を気にして、良いもの・気に入ったものでなくても、そこそこのものを買う」
「みんなと同じものでも、そんなに気にならない」という回答が増えています。
4.生活者の「選択疲れ」が進んでいる?
「情報は多いほどいい」という回答が減って、「関心のある情報の数」も減ってきています。今や、ECサイトを初めとする無数に提示される情報を前にして、”選ぶことに疲れてしまった”生活者の存在が見えてきます。
さて、みんなと違う消費の時代は終わるのか?
ライフスタイルも多様化が進み、自由な”ルール”で生きられる時代になりました。それはつまり、一人ひとりがすでに十分「個性的」な時代であるということ。
「みんなとは違う自分」をことさら意識する必要がなくなってしまった。
そんなことも考えられるのかもしれません。
あるいは、「みんなとは違う自分」を実現する手段が、消費から別のものにシフトしたと、そんな見方もできるでしょう。スマホ・SNSの急速な普及により、「リアル・モノ」から「デジタル・コト」へと変わっていったとも言えます。
─ YODOQの見方───────────────────────────
大変わかりすく、これ以上見方を加えることもないコラムですが、自分なりに2点掘り下げてみました。
1.まず冒頭記事で最初に注目しているファッションについて
この点については、私の肌感覚を話します。
・80年代 私が社会人になって衣料品の現場に居た時代です。
時はバブル前夜で、ファッションはDCブランド花盛り、分かりやすく言えとパルコ最盛期です。この時代のファッションは個性的なものであふれていて、みんなが色々な格好をして歩いていました。
・バブル期 海外ブランドブームがってきます。
みんな同じ海外ブランドのカバンを持ち、海外ブランドのスーツを着ていました。かぶることを肯定し、それを持つことがステータスだった時代。
個性が没し、むやみな上昇志向に変わっていった気がします。
・90年代 バブルが崩壊
当然、可処分所得が減って、ファッションに対する興味も積極的ではなくなってきます。
この頃、アメカジが流行り始めます。アメカジは、かぶって当然で、なおかつ安価。その後のユニクロの時代の布石が整ったともいえます。
また、イオン等GMSが安くていいものを出し始めていて、以前には考えられなかった、若者が郊外のショッピングセンターで服を買う時代が始まったとも言えます。
・そして現在は、ユニクロ、シマムラといったファストファッションが主流になり、ECサイトでは見比べることもなく、1クリックで買うことができます。
一方で、メルカリ、ヤフオクといったフリーマーケットサイトが大人気です。
安いものを、時間をかけず、賢く買う時代になってきたのではないでしょうか。
2.コト消費について
冒頭記事にあった、「「リアル・モノ」から「デジタル・コト」へと変わっていった。という言葉に注目しました。
「コト消費」という言葉はすでに定着しているようで、
「コト消費とは、「物」を所有することではなく、その物の購入によって得られる経験、もしくはサービスにおける経験そのものに価値を見出す消費傾向のことです。
物質的に充足してきた日本では、価値観が「所有」から「経験・体験」に移りはじめています。前述の通り、日本国内だけではなく訪日外国人の観光施策でも「コト消費」が盛んに取り入れられるようになりました。」とのことです。
そこで、私たちの実生活におけるおける「コト消費」につながる消費の変化を、自分なりに調べてみました。
(1)通信料
家計に占める割合は所得が減っているのにもかわらず、2010年の3.66%から2017年の4.18%と増えています。また、通信量(トラフィック量)は、この間に約3倍に増えています。
(2)イベントの市場規模
体験型、参加型消費の王道ともいえるライブやコンサートの市場規模は、1996年の720億から2014年の2749億と約4倍に増えています。
(3)スポーツ用品
2013年の1兆3511億円 2018年(予測)の1兆5120億円と10%ほど増えています。少子高齢化を考えると、増えていると言えます。
少々調べてみましたが、これだけでも、一人ひとりがすでに十分「個性的」な時代であり、あふれる物、情報に食傷気味なった人たちは「モノ」から「コト」へ興味が移ってきた傾向が見えるのではではないでしょうか。
参考:コト消費
消費動向調査
イベント市場規模と業界推移
スポーツ用品市場に関する調査