プログラミング必修化の課題
日本マイクロソフトなどが参画する業界団体「ウィンドウズ デジタルライフスタイル コンソーシアム」が東京学芸大学付属竹早小学校でプログラミング教室の公開授業を行い、50分の授業の中で、子どもたちは自身で自由にプログラミングしたコードをマイコン上で動作させるまでを学んだ。小学5年生の児童約30人を対象に、micro:bitと呼ばれるプログラミングして操れる小さなコンピュータでサンプルプログラミングを実際に動かし、プログラミングとはどういうものかを体験。
授業後、プログラミング教育に力を入れる佐藤教諭はmicro:bitを用いた公開授業の様子を見て、「入力と出力を学ぶには良い教材だ」と高評価。プログラミング授業の必修化の中で教える内容が定まった際には、はまりやすい、選びやすい教材だと述べている。
一方で、優秀な教材があっても、3年次から年間8時間から10時間ほどの授業時数を確保が必要など、既存の授業との時数の兼ね合いやプログラミング的思考を学ぶにあたってどれほどの時間を割けばいいかなどの課題もあげた。
引用:http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1812/05/news122.html
─ YODOQの見方───────────────────────────
2020年度から小学校でプログラミング教育が必修となる。この方針は、政府の産業競争力会議で示された新成長戦略にも盛り込まれた。背景には、今後懸念されるWebエンジニアをはじめとしたIT人材の不足があり、経済産業省が発表した調査によると2020年に37万人、2030年には79万人のIT人材が不足すると予測されている。こういった背景からプログラミング教育必修化がなされようとしているわけだが、必修化に際して大きな課題が三つある。
1.「授業時間」の確保
既に小学校では、外国語教育(英語)を新設するために、総合的な学習の時間を削減して授業時間数をひねり出している。2020年度に英語の「3年生から必修化」「5年生から教科化」が完全実施される。更に新たな教科、教育内容が必修となると、現在実施されているカリキュラムや教育内容を削減せざるをえなくなる。この場合、カット候補にあがるのが、思考能力やプレゼンテーション能力を養える「実験」や「体験学習」のような授業で、本来小学校で学ぶべき能力を習得できなくなるのではないかと懸念されている。
2.「指導人材」の養成・確保
プログラミング教育については、高度な知識やスキルが必要とされるため、研修制度の確立と研修時間の確保、専門家の協力や情報の教員免許を持つ教員の増員などが必要となる。実際にプログラミング教育先進国のイギリスでは、必修化に先立ち、教員へのプログラミング教育をまず実施した。政府は50万ポンド(当時の円換算で8500万円)を投じ、民間企業のカリキュラムを教員が学習するという教育訓練を実行したそうだ。2020年度からプログラミング教育を必修化するのなら、指導人材の養成・確保に早急に取り組む必要があるが、小学校教諭は現状でモンスターペアレント問題など、処理すべき多様な問題を抱えているため、教員への負担が極めて大きい。
3.「指導方法・教育教材」の開発・普及
論理的な思考力や問題解決能力を養うためのプログラミング教育とは、一体どのように実践すればよいのか、具体的な指導方法や教育教材が示されない限り、ほとんどの教諭は指導ができない。全国にプログラミング教育を普及させるためには、指導方法や教育教材の開発が人材の養成・確保とともに欠かせない。プログラミング教育先進国のイギリスでも、いまだに指導者のトレーニングや新教科の普及・啓発が当面の課題であると報告している。
今回の記事に出てきたmicro:bitは3つ目の課題の解決策として期待される。今後他二つの課題についてもどのような解決策が見いだされるのか注視していきたい。
参考:https://www.huffingtonpost.jp/kei-hata/programming-education_b_11345214.html