次世代ERPは「自動で分析」「Xデータと連携」

経営者が自動車を運転しながら、コンピュータに今日の情報を尋ねる。
するとコンピュータがスケジュールに加え、自社の経営状況の好調な点を示して『グッドニュースだ』と伝える。さらに経営者の指示通りに数字を示したり、グラフを表示したりする。
―あたかも部下のように話す、そんな対話型AIの機能を、SAPは「SAP CoPilot」として次世代ERP「SAP S/4HANA」に組みこんでいる。

SAPは2018年から「Intelligent Enterprise」というビジョンを打ち出し、同社が得意とするERPの分野にAI、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの先端技術を組み合わせ、仕事の在り方を変えようと試みている。
SAPジャパンの福田譲社長は、近代企業が広く使用している基幹システムを基礎として、新しい領域へチャレンジすることが重要だと示唆する。

既にSAPは、同社のアプリケーションにRPAの機能を組み込める「iRPA」をリリースしている。「あらかじめ基幹システムに業種別・業務別の機能として組み込んでおくことで、ユーザーがRPAによる自動化の方法を“考える”必要はなく“使う”ことにフォーカスしてもらいたいです」
同社のSAP S/4HANAは、クラウド版がメインになってきており、3カ月ごとに最新機能を追加している。そうした中には、さまざまな機械学習機能、機械学習を前提とした機能を盛り込んでいる。

また、これからの企業ITの在り方を示す「Intelligent Enterprise」には、次の4つのポイントがあるとしている。
(1)SaaS/クラウド
SaaSとは、「Software as a Service」の略でこれまでパッケージ製品として提供されていたソフトウェアを、インターネット経由でサービスとして提供・利用する形態のことを指す。
SAP S/4HANAを含む、企業システムの中核部分(デジタルコア)は「徹底的にSaaS化・クラウド化を図るべき」と促す。

(2)PaaS
PaaSは「Platform as a Service」の略でアプリケーションソフトが稼動するためのハードウェアやOSなどのプラットフォーム一式を、インターネット上のサービスとして提供する形態のことを指す。
標準化が難しい自社固有のプロセスや他のシステムとの連携には、PaaSを活用する。

(3)データ駆動型
機械学習エンジンに適する“きれいに整理されたデータ”は、SAP S/4HANAを中心とするデータマネジメントプラットフォームで管理する。

(4)インテリジェント化
AIや機械学習、アナリティクスなどのインテリジェントテクノロジーを活用し、集めたデータを分析していく。

引用:<IT media>
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1908/05/news006.html

─ YODOQの見方───────────────────────────

ERPとSAPの今後について少し深掘りしてみました。

企業で一般に利用されているERPは、営業・販売や生産、財務や人事、顧客情報などの業務(Operational)データで企業やビジネスで「何が起きたのか」を理解するためのツールです。
一方、今後、SAPや大手のERP系のパッケージが求めるデータは顧客満足度や従業員エンゲージメント、ブランド認知度、ユーザー体験といった経験(Experience)データで「なぜ売り上げが落ちたのか」「なぜ従業員が辞めたのか」というように、その状況が「なぜ起きたのか」を理解するためのツールです。

SAPは2019年、オンライン調査サービス&ソフトウェアを提供する米Qualtricsを買収。
ユーザー企業の顧客、従業員の体験の満足度を向上させる「エクスペリエンス・マネジメント」(XM)に注力しているとのこと。
このXMによって、ERPのデータとExperienceデータをしっかりと分析し、次にどのような手を打つかを現場や経営者が素早く決断し、動くことがこれからのBUSINESSで重要になってくると思います。

また、SAPの今後で切り離せない問題は2025年問題です。
国内大手企業を中心に4,000社以上の導入実績があるSAPですが、SAP ERPや同製品を同梱したSAP Business Suiteなどの保守サポートが2025年で終了することがユーザー企業の中で大きな問題となっているようです。
SAP ERPはその前進となるSAP R/3が1992年に登場して以来、実に20年以上も業界トップを走り続けてきた製品でSAP R/3という古いバージョンから、SAP ERPにおいて、バージョンアップが行われてきました。旧バージョンながら、企業向け基幹システムとしての実績と信頼性がありますが、この保守サポートが2025年で終了してしまうのです。

SAP ERPはUNIX、Windows、汎用機、Linuxなど複数OS、複数データベースで稼働するマルチプラットフォーム対応だったのに対してSAP hanaは専用の環境、専用のDBのみとなることです。(SAP hanaのDBはSybaseのオンメモリーDBを採用しておりハイパフォーマス、高可用性を実現している)
更に、SAP ERPでは業務データを扱うテープル数が肥大化し過ぎた事もあり、SAP hanaのDBに移行する為に膨大な時間と費用がかかってしまう問題があり、他社パッケージや自社開発に乗り出す企業も増えてくると思われます。
我々としてはこの先、SAPの行く末も見つつ、古いSAPのバージョンを理解する事で新たなビジネスチャンスが出てくるのではないでしょうか?

参考:<enterprise zine>
https://enterprisezine.jp/article/detail/12077