110番アプリまもなく開始 聴覚障害者向け

警察庁は5日、聴覚障害者など110番通報が困難な人に向けて、文字や画像で通報できるスマートフォンの110番アプリを9月中旬から運用開始すると発表した。
専用アプリをダウンロードし氏名などを登録して利用を開始する。通報するときはアプリを起動して、質問項目に答え、事件事故の内容別のフォームを選択することで、現場管轄の警察に通報することが可能である。また、全地球測位システム(GPS)の位置情報を使って通報場所が伝達されるシステムとなっている。
このアプリは障害者限定の運用を想定されており、通常の110番通報が可能な人には今まで通り電話での通報を呼びかけている。

参考:中日新聞「スマホ文字入力で110番 聴覚障害者向け、今月中旬に開始」

─ YODOQの見方───────────────────────────

記事では主に聴覚障害者向けだと書かれていた。これは、聴覚障害者が不得意とする通話で、110番通報を行うことが困難であるからである。このアプリはその他にもDV、誘拐されている、など声を出せない状況にある人にとっても有効であると考える。

先に述べたように、聴覚障害者にとって110番通報は困難である場合が多い。では、聴覚障害者は今まではどのように110番通報を行っていたのか。全国で広まっている方法は2つある。1つはファックス110番、もう一つはメール110番である。

参考:大阪府警察「聴覚や言語に障がいがある方のための110番」

都道府県ごとに指定のファックス番号、メールアドレスに連絡することで管轄警察への通報とみなすシステムである。確かに、聴覚障害者にとって文字で通報できることは有用な手段であるかもしれない。しかし、各家庭へのファックス普及率の減少、緊急時に落ち着いてメールの文章を打つことができるのか、という懸念はあるだろう。

話は少し変わるが、2012年インドのデリーで一人の女性が襲われ死亡した事件で、緊急通報が簡単にできていれば助かったのでは、という論争が起きた。ここから、ASEAN地域を中心に緊急通報の簡略化が始まったとされている。最近の緊急通報簡略化の事例としてiPhoneをとり上げる。iPhoneでは近年、電源ボタンを連続5回クリック、「Hey Siri、110番して」の声掛けなどでより簡単に緊急通報を行うことができるようになった。世界では、このシステムによって助かった命もある。

確かに、簡単に緊急通報を行いやすくしすぎてしまうといたずらでの110番や誤通報が増加してしまうかもしれない。しかし、この記事にとり上げられたアプリなど、緊急時に即時通報できないシステムは改善すべきである。これらの妥協点を探しつつ、よりよい緊急通報システムが構築されていくだろう。このアプリのリリースはまだであるので、その仕様にも注視していきたい。