イタリア・カプリ島に自然戻る

イタリア南部のカプリ島では厳しい外出制限が実施されたことで、自然が本来の姿を取り戻している。
観光シーズンには日に15万人が訪れていた島に、この3か月いたのは住民7000人のみ。漁業者は「感染拡大から2か月すると、海が透き通ってきたんだ」という。観光客が乗る船が詰めかけ濁っていた青の洞窟も、海水が澄み渡り見違える変化があった。ダイバーは「すごい数の魚がいました」という。海だけではなく、山や遊歩道にも昆虫や動物が戻ってきた。
住民は、節度ある観光が定着するよう願っている。

引用: BS1 国際報道2020 2020/6/17

─ YODOQの見方───────────────────────────

このニュースを聞いていて、最後の部分に気を留めました。「住民は、節度ある観光が定着するよう願っている」という部分です。国内のニュースでよく聞くのは、早く元の状態に戻ってほしい、ようやく少しお客さんが戻ってき始めたなど、経済活動が元に戻ることを期待する声です。ところがこの記事では、今のままの状態が維持されてほしいと言っているのです。本当に住民の方の声だったのか判断しかねるところなのですが、このような意見が公共の電波に乗るということにまず驚きました。
では他に、自然環境が戻ってきている状況をもう少し見てみます。

1. 温室効果ガスの排出量が16億トン減少見込み
イギリスの環境ニュースメディア Carbon Brief が発表したデータによると、今年の温室効果ガスの排出量は昨年に比べて16億トンも減少する見込みだそうです。これは約3億5000万台もの車が減ることに相当するようで、地球環境に大きな影響を与えていることは間違いありません。

2. 地球の振動が減った
各国で外出禁止や渡航禁止などの移動制限をしていることで、地球上で観測される「環境地震ノイズ」と呼ばれる振動が大きく減少しています。ベルギー王立天文台の地震学者は、ベルギーの首都、ブリュッセルの環境振動ノイズは約30~50%減少しており、普段は生活振動に紛れて観測できない振動まで観測できるようになったといいます。結果的に地震・火山活動観測も容易になったようで、これらの研究は大いに捗っていると思われます。

3. ベネチアの運河が鮮明なエメラルド色を取り戻す
イタリア全土で封鎖措置が敷かれ、水の都として知られるベネチアの観光客がほぼゼロとなったことで、運河があるべき姿を取り戻しました。

4. 動物に自由をもたらした
欧米では都市化によって野生生物の住処が失われてきたが、交通量が減少し、街を出歩く人間も劇的に減少したため、動物が街中に現れるようになりました。バルセロナではイノシシ、サンフランシスコではコヨーテ、フランスでは街中で鳥のさえずりが聞こえるようになったようです。

次に、観光客が減ったことを大いに嘆く意見も取り上げておきます。

「新型コロナで観光客の利用料収入が激減 国立公園、維持管理費もピンチに」
新型コロナウイルスの感染拡大は、国立公園の環境保全にも影響を及ぼしている。全国34カ所の国立公園のうち主要な15カ所を管理する一般財団法人「自然公園財団」(東京)によると、観光客の減少で、公園内の清掃や遊歩道整備などに充てる利用料収入が前年と比べ9割も減っている。維持管理が滞れば希少な生態系が損なわれかねず、関係者は気をもむ。

さて、ここに述べたことは、コロナが環境、観光業に与える影響に対する異なる考え方、視点です。すなわち、
・観光客が減ってよかった、という考え方
・実際に、本来の環境が戻ってきたという事実
・観光収入が減って、環境が守れないという考え方
これらは相対することですが、それぞれはいずれも納得できるものです。
今、「アフターコロナの世界」「感染症とともに生きる」などの議論がさかんにされ始めています。
色々な立場の人、色々と異なる考え方の中で、視野を広げた話し合いがされていってほしいものだと改めて思いました。
参考:FLYER 2020/5/2
   毎日新聞 2020/6/25