20年で400駅が無人駅に
駅員が終日いない「無人駅」の数が約20年間で1割増え、2020年3月時点で全体の5割近くになっていることが、国土交通省の集計でわかった。経営状況が厳しい地方鉄道に加え、都市部では一部時間帯に限った無人化も進む。駅員が不在になり、電車の乗り降りに支障を訴える障害者も少なくなく、国交省は鉄道事業者向けのガイドラインづくりを始めた。
都道府県別の無人駅の割合(20年3月時点)をみると、最も割合が高いのは高知の93.5%。徳島(81.6%)、長崎(79.6%)と続いた。30道県で無人駅の比率が5割を超え、特に北海道、東北、北陸、中国、四国、九州などの地方が目立った。無人駅の割合が低いのは埼玉(3.0%)、東京(9.9%)、大阪と神奈川(ともに16.0%)。沖縄は、県内を唯一走るモノレールの19駅すべてが有人で無人駅はなかった。
無人駅の増加は、少子高齢化や都市部への人口流入で、特に地方鉄道の経営が厳しくなっていることが背景にある。各社は管理費を抑えるために業務を外部委託したり、一部時間帯を無人にしたりするが、それでも維持が難しいと判断して無人駅にすることが多い。無人駅の増加に伴い、転落事故など安全面での課題も少なくない。各社は無人駅にインターホンを設置して別の駅から遠隔操作したり、必要なら職員を派遣したりして対応するが、障害者からは「鉄道を使うための介助に事前連絡が必要な駅があるのは差別ではないか」との声もあがる。
─ YODOQの見方───────────────────────────
JR東海は11月13日、券売機近くに設置するインターホンやカメラにより、オペレーターが遠隔で乗客に対応する「集中旅客サービス」を導入することで東海道線と関西線の計7駅を無人化すると発表しました。これまでは、駅員が不在となる早朝と深夜は券売機での切符の購入や交通系ICカードのチャージはできませんでしたが、システムを導入することで列車の運行時間帯であれば切符の購入などが可能となり、一般の利用者にはメリットがある施策となっています。また、鉄道会社側も早朝業務をなくすことが泊まりでの勤務者を減らすことに繋がり、労務費の削減となります。
能勢電鉄株式会社は、川西能勢口駅以外の駅で駅務機器遠隔操作システムにより、券売機や精算機などの駅務機器とシャッターや照明、放送等の駅設備をオンラインによる集中監視と遠隔制御で駅業務の無人化を図っています。ここでは、各駅に設置された監視モニターでホームからの転落事故などの異常を発見するとホーム異常通報を遠隔で作動させ、乗務員や関係係員に異常を知らせて対応する仕組みです。
駅の無人化は鉄道会社にとっては業務の効率化の一環ではありますが、障害者にとって駅の無人化は安全性や利便性の低下に直結します。上記の「集中旅客サービス」システムでもいざとなれば係員が車で駆けつける体制もとっているとのことですが、事故などの緊急事態が発生した時にどれくらいの時間で到着するのかは明言していません。
新型コロナウイルス感染症の影響で通勤せずに在宅でのテレワークを行う人口が増加したことや観光客が減ったことを背景に鉄道利用者が減少し、鉄道会社の利益も前年と比較して大きく減少し、経営が苦しくなっています。経営基盤が貧弱な鉄道会社や利用客の少ない駅などが、ますます無人化されていくのではないかと思います。システムを利用し効率化することは大切ですが、今後高齢化が進む世の中では障害者だけでなく、高齢者に対する配慮も必要になってきます。
駅が無人化しても電車への乗降時には車掌の手助けが受けられたり、ホームへ辿りつくまでの道筋の更なるバリアフリー化などで物理的な障壁を減らす対応が必要になってきますが、施設の整備や運用には鉄道会社側の思惑だけでなく、日々利用している障害者や高齢者の意見をくみ取り、反映させていくことも重要ではないでしょうか。