製薬業界でいま、「希望退職ドミノ」のなぜ

製薬業界で社員リストラの動きが激しくなっている。今年2月、医薬品メーカー準大手の協和発酵キリンと中堅の鳥居薬品がそれぞれ希望退職の募集を発表した。協和発酵キリンは全社員4000人の約4割、1600人を対象に希望退職を募る。募集期間は3月11日~3月28日で、対象は45歳以上かつ勤続5年以上の社員。募集人数の枠は設けない。

鳥居薬品のケースは、これまで日本国内で独占していた抗HIV薬の販売が2019年より一気になくなり、売上の3分の1がなくなるという事態に仕方なくという側面が大きいが、それ以外のケースでは業績悪化の為のリストラというより、今後の未来を見据えたリストラという側面が強いようである。

例えば協和発酵キリンではたくさんの人員の削減を発表したが、今後のデジタル時代に必要となるデータサイエンティストのような人材の採用は積極的に行っている。今後の変化へ企業が対応していく為の人材は必要としており「質的転換」を図っているようである。

新薬開発が難しくなるなか、規模の拡大が遅れている日本勢は欧米企業と比べると不利な状況が今後続くと見られている。人員削減、M&A、提携など今後大きな変化が起こることは間違いないだろう。

引用:https://toyokeizai.net/articles/-/267825?display=b

─ YODOQの見方───────────────────────────

製薬業界は大きく

1.先発医薬品メーカー
2.後発医薬品(ジェネリック)メーカー
3.バイオ製薬メーカー
4.その他(漢方薬・OTC医薬品など)
※OTC医薬品とは薬局などで販売している大衆薬のことである。

に分けられる。それぞれのメーカーによって課題は異なる

1.先発医薬品メーカーの課題と動向
<課題>
・新薬の開発難易度はどんどん上がっている
・それにともないR&Dコストも上がっている
・各国の法規制(薬事法みたいなもの)はどんどん厳しくなっている
・ジェネリックメーカーの台頭によって「新薬で稼げる期間」が短くなっている
・日本国内では「高すぎる薬価」が問題となっており、薬価制度の改定のたびに値下げさせられている
<動向>
・新薬開発の費用を賄える規模へのM&Aが活発になる
・国内の厳しい状況を踏まえグローバル化を図る
・デジタル時代へ企業を変化させる

2.ジェネリック医薬品メーカーの課題と動向
<課題>
・誰にでも作ることができるため、すぐ競争過多になる
<動向>
・今のところ急成長している企業であっても、すぐにポジションを失う可能性がある

■製薬業界は今後どうなる?
・これまでのように激甘な市場で荒稼ぎできる業界ではない
・今後も世界的なM&Aは続く
・国内大手5社も集約される可能性あり
・中堅以下クラスの先発医薬品メーカーはますます厳しい
・ジェネリック医薬品メーカーも安泰ではない
・業界の整理が終われば未来は明るい(何年後になるかは不明)
・パイプラインの弱い先発医薬品メーカーは市場から退場させられる

いずれにせよ、これまで製薬メーカーが日本で出していた利益は、少なからず国に奪われて(国民に奪われて)しまう。そうなるように厚生労働省が主導しているのだから逆らえないだろう。